AWSのコスト試算は「公式Pricing Calculatorに数字を入れて終わり」ではありません。本記事では、実案件で精度を出すための考え方とテクニックを整理します。
目次
試算の3ステップ
- ワークロード定義:DAU/MAU、ピークRPS、データ転送量、保持期間を数字で出す
- サービスマッピング:ワークロードをサービス構成に落とす(EC2タイプ、RDSクラス、ストレージ容量)
- 金額算出:Pricing Calculator + 見落とし要素の手計算
見落としがちなコスト要素
EC2やRDSの料金は分かりやすいですが、月末請求でハッとなるのは大体これらです。
- NAT Gateway:時間料金 + 処理データ料金。ECS Fargate × プライベートサブネット構成では一番高くなることも
- データ転送(外向き):CloudFront経由 vs 直接 で大きく変わる
- EBSスナップショット:取りっぱなしで容量課金がじわじわ伸びる
- CloudWatch Logs:取込料金(Ingestion)が高い。DEBUGログ垂れ流しは要注意
- RDS Multi-AZ:単純に料金が2倍になる
- VPC Endpoint:時間料金 + 処理データ料金。NAT回避とのトレードオフで判断
- Lambda + VPC接続:ENI管理コストとコールドスタート増
Pricing Calculator の使い方のコツ
- サービスごとに見積もりを保存し、URLで共有できる
- 「Bulk Import」でCSV一括投入も可能
- Savings Plans / RIを未適用の状態で先に試算し、後から割引を計算する
割引の考え方
- Savings Plans (Compute):EC2 / Fargate / Lambdaに横断適用、最大66%
- RI(リザーブドインスタンス):RDS / ElastiCache / Redshift で使う
- Spot:バッチ・CI・検証で活躍。最大90%引き
- S3 Intelligent-Tiering:アクセス頻度に応じて自動で階層移動
Savings Plansは「将来的にも使い続ける確信度」が高いものから1年契約で始めるのが安全。3年契約は安いですが、技術的に陳腐化するリスクも考慮します。
試算例:小規模WordPress(月10万PV)
EC2 t4g.small (24h/30d) : $12
RDS db.t4g.micro (Single-AZ) : $13
EBS gp3 30GB : $3
ALB : $20
CloudFront 50GB転送 : $5
Route53 ホストゾーン : $0.5
合計 : 約 $54 (約8,500円)試算例:中規模APIサービス(月1,000万リクエスト)
API Gateway 1,000万req : $35
Lambda 1,000万実行 (256MB/200ms): $25
DynamoDB オンデマンド : $40
CloudFront 200GB転送 : $20
CloudWatch Logs (10GB) : $5
合計 : 約 $125 (約20,000円)※税抜・1ドル160円換算。実際のリージョンや為替で変動します。
運用後のコスト最適化
- Cost Explorer:日次で「予期せぬ増加」をチェック
- AWS Compute Optimizer:使用率に基づいてEC2 / Lambda / EBSのリサイズを提案
- Trusted Advisor:未使用ELB、アイドルRDS、未割当EIPを検出
- Cost Anomaly Detection:機械学習で異常を検知し通知
提案時に伝えるべきこと
顧客向けの見積もりでは、次の3点を明示しておくとトラブルが減ります。
- 前提条件(リクエスト数、データ量、リージョン、為替レート)
- 変動要因(スケール、外向き転送、ログ容量)
- 含まれていないもの(運用代行、ドメイン、SaaS連携)
まとめ
コスト試算は「前提を明文化する」ことが半分の価値を持ちます。数字の精度を追うよりも、抜け漏れの少なさと、運用後の確認体制まで含めて提案するのが信頼を得るコツです。
